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日本のヴィーガン/ベジタリアン事情と当店について(チェコのアジア観光サイトからのインタビューにお答えして)

2019年夏、リニューアルしてから海外からのお問い合わせが以前以上に増えてありがたい、と思ていたところ、チェコの「Asian style」さんというアジア観光を扱うポータブルサイトのライターさんから連絡がきました!

どうやらライターさんが日本にルーツのある方のようで、日本に帰国(?)するタイミングでいろいろインタビューをしたいとのこと。

その内容が、当店Loca★Kitchenについてだけにとどまらず、日本のヴィーガン、ベジタリアン事情やその文化、歴史的背景などなど、思った以上にがっつり掘り下げてくれ、うれしい驚き!

当店店主が日本を代表してお答えしていいのか・・・?と若干ガクブルしつつ、頑張ってお答えしました~。

「とても興味深い内容ですばらしい記事になりました」と、喜んでいただき、2回に分けて無事掲載してくださったそう♪

当店が暫定「チェコで一番有名な日本のヴィーガンレストラン」です!キリッ!(たぶん)

 チェコ語なのでまったく読めませが、きっとステキにまとめてくれているはず☆)

そして、これは、日本に興味のあるチェコの皆さんだけでなく、ぜひ日本のヴィーガン/ベジアリアンの人やそうじゃない人にも共有したい内容では!?ということで、Asian Styleさんに許可をもらって同じ内容を日本語でこちらに掲載します!

最近は日本でもヴィーガンやちょっとずつ広がりつつありますが、なかなか体系的にその背景などは知られていないので、ご参考にしたり心の中でツッコんだりしてみてください☆

<目次>

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1. どのような経緯からベジタリアンレストランを始めたのですか?

2. 日本でのベジタリアンの現状はどうでしょうか? また日本における歴史的な側面や理由などもありますでしょうか。

3. ベジタリアンのブーム的なものは過去や現在にありますでしょうか。

4. 日本におけるベジタリアンの情報へのアクセスできる媒体はありますでしょうか。またメディアやサイトでそういうことを教えてくれたりするところはありますでしょうか。

5.日本人は外国に比べて動物へ対しての考え方や思いの違いがあると思いますか?

6.”オーガニック、無農薬”の話になりますが、ロカキッチンではオーガニックの材料をしていますか?

7. 答えるのは難しいかもしれませんが、一般的に東京に在住している人にとってベジタリアンになることは食費はどう代わると思いますか?

8. どのようにメニューを作っていますか?どのメニューが人気ですか?

9. 日本のメニュー、外国のメニューでしょうか?また、日本のベジタリアンの料理へメニューはどういったものがありますか?

10.ベジタリアンの世界では何かトレンドやブームなどが食べ物やドリンクにありますか?

11. ”ヘルシー”なドリンクや食べ物への意識はどういったものですか?

12. お客様、もしくはベジタリアンの人の年齢層や性別はどれが多いなどありますか?見た目や性格など何か共通点などはありますか?

13.日本でベジタリアンである弊害や難しい点はどこですか?またそれをどのように解消できる方法などはありますか?

14.ダシの代用品は野菜が基本でしょうか?何か特別な秘密のレシピや調味料などがありますか?

15.日本に来る外国人ベジタリアンには何をお勧めしますか?

16. 秋らしい何か特別な食材、メニューなどはそちらでありますか?

17. この読者に対して何か書いていただきたいこと、コメントなどがありましたらご記載ください。

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1. どのような経緯からベジタリアンレストランを始めたのですか?

自分自身が食べることが好きで、大学院を出て出身校で働き始めたころから、友達と作った料理を持ち寄ったり一緒に料理をするイベントをやっていました。

その中で、主に海外からのベジタリアンやヴィーガンの人たちと出会い、動物性の材料を使わなければよりたくさんの人と一緒に食事を楽しめると気づき、自分で料理を勉強しながら、遊びの延長でイベントなどにケータリングをするようになりました。

今から考えると、それより以前に南米に留学した際、現地でできた友人にヴィーガンの人が何人かいたことも影響していると思います。

ライフスタイルという意味でも、会社へ通ってあわただしく働くより、自分のペースで仕事を作りたいという気持ちが強く、ケータリングを続ける中で店を持ちたいと思うようになって2017年の夏にLoca★Kitchenをオープンしました。

現在では自然派ワインと、それに合うヴィーガン料理を中心に提供しています。

2. 日本でのベジタリアンの現状はどうでしょうか? また日本における歴史的な側面や理由などもありますでしょうか。

日本のベジタリアン、ヴィーガンに関するデータ自体が殆どないのが現状ですが、「vegewel」(日本のベジタリアン、ヴィーガンやヘルシー系飲食店に特化した情報サイト)は2017年時点で人口の約4.5%がそうした食生活をしている、という数字を挙げていて、同じ経済水準の諸外国と比べると非常に少ないです。

この理由としては、

①日本は魚と大豆、たまに捕れる野生の動物をたんぱく源としてきた歴史が長く、肉食文化自体が大戦後に欧米から入ってきたもの。このため現在も牛肉や豚肉の半分以上を海外から輸入しており、工業生産的な食肉産業への疑問や狂牛病といった肉食の弊害が知られ始めたのも比較的最近であること

②社会問題に対する個々人の関心が諸外国と比べて低く、アニマル・ライツや気候変動、フードセキュリティへの関心が薄いこと

③日本では、現実とはズレのある「単一民族、単一文化」という意識が歴史的に強く、様々な側面でダイバーシティへの理解が成熟していないため、宗教上の理由や社会的な問題意識から動物性のものを摂らない人への対応に遅れがあること

などが挙げられます。

日本ほど様々な国の料理が食べられる国は珍しいといわれていますが、その一方でベジタリアンやヴィーガンへの対応にはまだまだ課題が多いのも特徴です。

訪日外国人中のベジタリアン/ヴィーガン人口は4.7%ほどと考えられていて、2020年に日本で開催されるオリンピック、2025年の万博を見据えて対応力をつけていくことが期待されます。

一方で、日本では健康志向が強く、ヘルスコンシャスなコンセプトと結びついたベジタリアニズム、ヴィーガニズムは受け入れられやすく、経済的な余裕がある層や若い女性などが普段は肉や魚も食べ、たまにベジタリアン・フードを取り入れる傾向もあります。

スピリチュアル的な思想の人にもベジタリアンは多いですね。

また、ベジタリアンやヴィーガンにとって貴重な蛋白源である大豆や、それを加工した豆腐、納豆などが手に入りやすいのは日本の良い点だと思います。特に豆腐を使用したケーキやタルトのレシピは人気が高いです。

3. ベジタリアンのブーム的なものは過去や現在にありますでしょうか。

日本では1970年代以降、アメリカの後を追う形でエコロジー運動やヒッピームーブメントが盛り上がり、玄米菜食を基本とするマクロビオティックという食事法・思想も逆輸入されました。そのなかでベジタリアンという食事スタイルも知られるようになりました。

その後、外国人や海外経験のある日本人が増える中でベジタリアンへの理解はゆるやかに広まっていったと考えられます。

2011年に日本は大きな震災を経験しましたが、原発事故の影響から食の安全についてさまざまな議論が起こり、結果としてオーガニックやベジタリアンへの関心も高まりました。

現在はオリンピック、万博に向けてインバウンド需要への期待が高まる中、高級店に限らず浅草などの観光地をはじめ、ベジタリアンメニューや英語表記に対応する食堂が増えてきています。

4. 日本におけるベジタリアンの情報へのアクセスできる媒体はありますでしょうか。またメディアやサイトでそういうことを教えてくれたりするところはありますでしょうか。

国内向けに日本語で情報を発信する媒体は増えてきましたが、海外の方が見てわかるメディアやサイトは少ないのが実情です。

その中で前述の「Vegewel」サイトでは英語でもベジタリアン、ヴィーガン対応の店を探すことができます。

それ以外には、ワールドワイドなベジタリアン、ヴィーガン向け口コミサイト「Happy Cow」や、フェイスブック、インスタグラムなどで「#tokyo #vegetarian」などと入れて検索していただくのが良いかと思います。

5.日本人は外国に比べて動物へ対しての考え方や思いの違いがあると思いますか?

キリスト教的世界観のヨーロッパでは、自然とは戦ってコントロールしていく対象であるのに対し、仏教や土着神への信仰に基づいた日本では自然の驚異に畏れ(おそれ)を抱きつつも共生していく、という世界観が強いと一般的に言われています。

日本では仏教伝来の後、7世紀後半から8世紀にかけて動物を殺したり食べたりするのを禁止する法令が出されて広まっていき、江戸時代だった17世紀には将軍によって過剰な動物保護政策が取られたこともありました。

こうしたことから、日本では農耕や運搬の道具として牛、馬を飼い、食用に鶏、食用やペットとして犬を飼う以外は、ヨーロッパのような食用の家畜・牧畜文化は広まりませんでした。

これが、ベジタリアニズムという発想自体が日本にとって外来の新しいものである大きな理由だと思います。

また、昔話に擬人化された動物が出てくるのはヨーロッパも日本も同じですが、日本では人間と動物が隣人として交渉を行うというストーリーがよく見られます。例えば、狐やウサギなどは日本にもたくさんいましたが、ヨーロッパでこうした動物が狩の対象である一方で、日本の昔話では日常生活の中で騙しあったり贈り物をしたり、時には守り神として丁重に扱わなければいけない存在として描かれてきました。

(こうして考えると、家畜としていじめられていた動物たちが家出して人間に対抗するブレーメンの音楽隊の物語はおもしろいですね。)

日本には、村や集落を取り巻く比較的小さな山や雑木林を意味する「里山」という言葉があります。かつては多くの人が里山の近くに住み、そこで日々出くわす野生の動物は、狩の対象というより身近な隣人という感覚が強いものでした。

今では野生の狸や狐、サルを身近に感じることができるのは、残り少なくなった里山にすむ一部の人だけですが、これが動物に対する日本人の伝統的な感覚だと思います。

現代の日本人にとって身近な動物は犬や猫、小鳥やハムスターといったペット、また街中で望まずして出会ってしまうネズミなどですが、そういった動物に対しては特にヨーロッパの人たちのとの感覚は変わらないのではないでしょうか。

動物に対する感覚は伝統的なイメージから変わっていないのに、急速な工業発展や宅地開発によって動物の住処が減り、また洋食文化の浸透で現実では動物の扱い方が大きく変化しているというギャップが、日本でアニマル・ライツへの関心が低い大きな原因だと思います。ペットや野生の動物保護、フードビジネスが抱える課題は多いです。

今後、日本やヨーロッパに限らず、様々な国で社会、文化的背景を考慮しながらエコ・システムの再生、ベジタリアニズム、ヴィーガニズムへの理解が進むことを願います。

6.”オーガニック、無農薬”の話になりますが、ロカキッチンではオーガニックの材料をしていますか?

料理やデザートの材料すべてをオーガニックでそろえるのは難しいですが、当店で力を入れている自然派ワインは、ビオディナミ製法で作られたチリやオーストラリアといったニューワールドのもの、EUのオーガニック認証を得ているものをそろえています。

7. 答えるのは難しいかもしれませんが、一般的に東京に在住している人にとってベジタリアンになることは食費はどう代わると思いますか?

自炊をするのであれば、大豆や豆腐が手に入りやすい分、食費は抑えられると思います。

ただ、外食をするとなるとベジタリアン・レストランが比較的多い都心部は値段が高く、都心から外れたエリアだとベジタリアン向けの飲食店自体が少ないので探すコストがかかる可能性はあります。ただ、ベジタリアンむけの飲食店の傾向として、都心部にある席数が多くラグジュアリーな店は除き、ディナーにお酒を飲んでおしゃべりをしながら長居するよりは、純粋に食事をしたらすぐ帰ることを想定したつくりの店が多いので、そういう意味では食費は安く抑えられるかもしれません。

8. どのようにメニューを作っていますか?どのメニューが人気ですか?

2019年の8月にリニューアルをしてから、自然派ワインとそれにあうフードを中心に提供しています。

自家製ベジ・チーズの盛り合わせやファラフェルのピタパン・サンドイッチが特に人気です。

ワインは洋風な料理に合う、というのは当たり前ですが、近年はエスニック料理とのペアリングも注目されており、当店でもさまざまな可能性に挑戦しています。

9. 日本のメニュー、外国のメニューでしょうか?また、日本のベジタリアンの料理へメニューはどういったものがありますか?

洋風メニューが中心で、エスニックなテイストがある料理も何品か用意しています。

また、ケーキやタルトといったデザートも2種類ほど用意していて、こちらは動物性材料を使わないだけでなく、グルテンフリーで作っています。

10.ベジタリアンの世界では何かトレンドやブームなどが食べ物やドリンクにありますか?

ベジタリアンやヴィーガンの人にはアルコールを取らない人も多いです。

それにはいろいろな理由があるので、そうした食のスタイルは尊重されるべきですが、近年は日本市場でもヴィーガンやオーガニックと銘打つワイン、ビールは増えています。また、個人的に、生産地の歴史や生産者のストーリー、またブドウが栽培されている土地の個性(テロワール)を飲む人に届けるという側面のあるワインは、ベジタリアニズムやヴィーガニズムと親和性が高いと考えています。

日本のベジタリアン、ヴィーガン向け飲食店で積極的にアルコールとフードのペアリングを打ち出している店はとても少ないですが、今後増えていくのではないかと思っています。

11. ”ヘルシー”なドリンクや食べ物への意識はどういったものですか?

化学調味料を使った食品や揚げ物ばかり食べていたらヘルシーでないのは当然ですが、個人的には、自分自身の体質、体調や味の好みを理解し、栄養面、精神面ともにバランスの取れた食事をすることが大切だと考えています。

現代の生活は慌しすぎて、自分が食べているものが何からできているのか、誰がどうやって作ったかなど考えることもなく、カロリーだけ摂取しているような人も多いです。その結果として消費者の健康面の問題だけでなく、「早く、安く」提供することが重視される外食産業で働く人たちの労働環境にも問題が生じています。

食事という側面にとどまらず、自分の体と向き合ったり食べ物のバックグラウンドを想像する時間や環境を整えて「ヘルシー」なライフスタイルを選択していくが重要ではないでしょうか。

12. お客様、もしくはベジタリアンの人の年齢層や性別はどれが多いなどありますか?見た目や性格など何か共通点などはありますか?

当店のお客さんの半分くらいは海外の方です。短期間日本に来ている旅行者の人もいれば、長いこと日本に住んでいると思われる日本語を流暢に話す人もいます。性別や年齢層はばらばらですね。

日本人のお客さんでは女性が多く、海外経験があってベジタリアンやヴィーガンになった人、普段はベジタリアンではないけれど、ヘルシーなものが食べたくて来店する人に分かれている印象です。

当店に限らず、ベジタリアンやヴィーガンの人は、外見的にはタトゥーがたくさん入ったパンクロック・テイストな人、穏やかな学者風の人、ヒッピー・カルチャーの影響を受けている人、都会的なスタイリッシュな人など様々です。

でも共通して、穏やかで文化水準が高い人たちだと感じます。

13.日本でベジタリアンである弊害や難しい点はどこですか?またそれをどのように解消できる方法などはありますか?

日本のコンビニやスーパーマーケットでは、手軽な値段でたくさんのお弁当や加工食品を買うことができますが、一見しただけではわからない「かつおだし」や「豚肉エキス」といった動物性の材料が使われているものが多いです。

ラベルの原材料名をよく読むことが必要ですが、日本語のみで表記されているので、海外の方にはわかりづらいです。

また、圧倒的にベジタリアン対応メニューが少ないため、仕事の仲間や友人と食事を一緒にするときに、行ける店が限られてくるという難しさもあります。

家で食事を作ればそうした問題は解消できますが、そのほかお気に入りのベジタリアン、ヴィーガンの店を何件か見つけておくのも良いと思います。

また、日本の飲食店の形態は多様化してきており、普段は違う仕事をしている人がどこかのお店の定休日を借りて週に1~2日だけオープンする店や、何人かの友達で店舗を一つ借りて、交代で店番するところもあります。

日本のベジタリアン・コミュニティもこうした企画を考えてみると面白いかもしれません。

14.ダシの代用品は野菜が基本でしょうか?何か特別な秘密のレシピや調味料などがありますか?

お勧めなのは、みじん切りにしたニンニク、たまねぎ、その他余っている野菜を煮て、オリーブオイル、塩コショウ、少量の醤油で味付けしたものです。そのままスープとして飲んでもおいしいですし、良いダシ汁にもなります。

また、乾燥しいたけや昆布をお湯で戻すときに出るエキスも日本ではダシとして重宝されています。

昆布だしはインスタントのパウダーでも売られているので、使いやすいのではないでしょうか。

15.日本に来る外国人ベジタリアンには何をお勧めしますか?

近年はラーメンや寿司といった日本らしい食べ物をベジタリアン向けのレシピで提供する店も出てきました。

そうした飲食店もいちど訪れてみるといいかもしれません。

また、和菓子には動物性の材料が使われていないものが多いのでお勧めです。

16. 秋らしい何か特別な食材、メニューなどはそちらでありますか?

9月から、火曜と水曜は「Vegan Curry Day」として週変わりで2種類のカレーを提供しています。

カレーと相性の良いワインもありますので、ぜひ試してみてください。

また、いつも用意している「季節のタルト」では、梨や桃を使ったものを出しています。

17. この読者に対して何か書いていただきたいこと、コメントなどがありましたらご記載ください。

日本では、ベジタリアン、ヴィーガン市場はいま成長の過程にあります。

その分、小さな個人店などは特に個性があり面白いです。

もともと洋食から和食、エスニックなどさまざまな食べ物が楽しめる国なので、そのなかでお気に入りの店を見つけてみてください。

以上、メールでのやりとりをそのまま掲載しましたっ☆

ベジやヴィーガンに限らず、普段の食生活にでもなにか参考になれば嬉しいです♪

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